仮面ライダーBLACK SUN 感想まとめ

映画

本日10月28日より配信が始まりました、仮面ライダーBLACK SUN。
この日を待ちに待ち、一挙配信ということで早速一気見してきましたので感想を語らせてもらいます。

まず結論から。
僕個人としては中々楽しめましたが、かなり人を選ぶ作品だな、という印象を受けました。
そして評価をすることも非常に難しい作品でした。
といいますのも、世界観や雰囲気がダークであることや、グロテスクな描写が多いこと、物語の難解さ(ちょっとだけ難しい)、特撮ヒーローとしてはどうだろうかという顛末。これらが人によって受け入れられない場合があるだろうな、と思ったからです。
僕個人としてはいい点悪い点が複数あるため難しいところ。
特撮ドラマとしては85点くらい。一方で、特撮ヒーローとしては65点くらいでしょうか。楽しむことはできたけれども、物足りなさも覚えたというのが正直なところです。
とはいえ、なんだかんだ言いつつも僕はわりと気に入りましたし、ファンなら一度は見て損はないと思った本作。ここから先は作品の良かったところ、イマイチだったところをネタバレ少な目で語っていきます。

作品の良かったところ

俳優の演技

特に主演の西島秀俊さんと中村倫也さんの演技がよかったですね。特に中村倫也さん。表情の作り方、声の出し方、どれをとっても作品世界を大いに盛り上げる演技をされていました。また、年齢的にも若いため仮面ライダーへ変身することにも違和感はなく、素直にかっこいいと感じることができました。めちゃくちゃよかった。

正直中村倫也さんについては全く知らないレベルで興味も一切なかったのですが、今回の演技はあまりに良すぎてファンになりました。中村倫也ファンの方は絶対に見た方がいいレベルです。必見です。とにもかくにも顔と声がいい。いやマジで最高です。

一方、西島秀俊さんも演技は大変よかったのですが、やはりあの年齢で南光太郎のあの服装には少々違和感を感じてしまった…。そこだけは少し残念です。

それ以外の俳優さんも、いい意味で憎たらしいキャラクターが多数登場し、めちゃくちゃ腹が立ちました。演技力が高すぎる。特に腹が立ったのは首相演じるルー大柴さんと、反怪人団体の井垣を演じる今野浩喜さんです。
この二人、マジでめちゃくちゃムカついた!!

ビルゲニア

ビルゲニアといえば、TV版の仮面ライダーBLACKにて登場するライバルキャラクターの一人。敵組織・ゴルゴムの大幹部である三神官にも勝るとも劣らない実力を持ち、中盤から終盤にかけてBLACKを何度も苦しめた怪人です。もし生まれる時代さえ違えば、もう一人のブラックサン、あるいはシャドームーンになっていたかもしれない存在であるため、物語の中でもかなりの存在感を放っていましたね。

そんなビルゲニアの存在感は、このBLACK SUNでも健在です。
というか、ビルゲニアの出番とか見せ場とか多すぎるんだわ。

BLACK SUNが配信される前、監督やスタッフの対談で「僕たちはビルゲニアと向き合わなければならない」という旨の発言を行い、ビルゲニアに対してかなりの熱意を示していましたが、ちょっとこれはやりすぎでしょう。ビルゲニアめちゃくちゃいいキャラすぎて、三神官よりも目立ってしまってます。最高。
男が好きになってしまう男という感じです。いいぞビルゲニア。もっとやれ。

変身

PV見た人ならわかるでしょうが、とにかく変身がかっこいい。初めてBLACK SUNのビジュアルを見たときには「黒すぎてよくわからん。というかBLACKというより、これでは仮面ライダー・真じゃないか」という印象を受け、「TV版のBLACKのようにもっとヒーローらしい見た目にしてもいいんじゃない?」と頭を抱えたものです。

しかし実際に変身を目の当たりにしたら速攻で掌を返しました。

特に最終決戦で見られる目と身体のラインが赤く光った姿――これはまさしく仮面ライダーBLACKですね。めちゃくちゃかっこいいわ。555のフォトンブラッドよろしく輝く深紅が、黒いボディに映える映える。『真』に次ぐレベルの生物的な造形でありながら文句がないですね。立体物が欲しくなりました。
あと変身における『人間体→バッタ怪人→変身後』という変身の過程もしっかりと踏んでおり、原作であるTV版のリスペクトを強く感じました。
自動で動くベルト、かっこよすぎる。あと変身後のポーズもTV版の名乗りポーズをオマージュしており、めちゃくちゃかっこいい。

人間ドラマ

こちらもかなり力を入れていましたね。特に50年前と現在とで人間関係が大きく変わってしまっているわけですが、その様相や因縁が丁寧に描かれており、キャラクターごとの確執がいい味を出しています。少々ドロッとした描写もありましたが…まあ555やキバで鍛えられた特撮ファン的には、こんなもんだよね、という感じでした。

ところで本作はR18指定されているわけですが、その内容が「暴力」「薬剤」「性描写」などなど。性描写ということで少々緊張していたのですが、これ大したことありませんでしたね。唇が触れる程度のキスがいいところで、深いキスはもちろん、胸を揉む描写すらありませんでした。
なんやねんこのレーティング。

BLACKのオマージュ

これはファンしか楽しめない要素であるため作品の評価とは別にしようかと悩んだのですが、まあ仮面ライダーBLACKのリブート作品なのでこちらもいい点として加えようかと思います。

とりあえず最終話のOP、これがやばいですね。やばいとしか言えないです。やばい。僕はBLACKはVHSで見て、平成ライダーからリアルタイムで見ていた世代なのですが、思わず「あっ!あっ!あーーーーっ!」という変な叫びの後に大笑いしました。BLACKのリアルタイム世代なら僕以上にやばいことになると思います。

それ以外にも仮面ライダーBLACKにおけるエピソードを彷彿とさせる展開や、人間関係、描写などが多々ありました。もともとBLACK SUNの制作の際、東映側の要望は「とりあえずBLACKとシャドームーンが戦ってくれればいいから」くらいのものだったそうですが、制作にあたってTV版と漫画版をしっかり履修していたそう。その甲斐あってか、作品の節々でBLACK要素を感じられる作品となっています。

以上が、大まかにBLACK SUNで良かった点になります。
ここからは個人的にイマイチだな、もう少し何とかならなかったかな、という点を述べていきます。苦手な方はブラウザバックしてくださいね。

イマイチだったところ

南光太郎の行動原理がわかりにくい

主人公・南光太郎が何を目指しているのか、という点が非常に分かりにくかったため、感情移入しずらいというのが個人的にイマイチでした。彼の行動にどこか一貫性が感じられず、結局何をしたかったのか、空白の50年間になにをしていたのか、どうして和泉だけを守るのか、といったところが分かりにくかったです。僕の読解力がないとすればそれまでですが…。

一方で、秋月信彦や和泉葵を中心に、ビルゲニアや三神官、その他人間やキャラクター等はわりと感情が分かりやすかっただけに、光太郎はもう少しならなかったかな、と感じたのが正直なところです。

“仮面ライダー”を期待していた

表題に仮面ライダーと付いていたため、完全に特撮ヒーローとしての仮面ライダーを本作に期待していましたね。ところが蓋を開けてみると、バトルは一話に一度、ノルマ程度に挟まれる的な印象を受けました。また、全編の半分は仮面ライダーとしてではなく、バッタ怪人として戦っているという点も少し気になりました。

漫画版を読んでいるなら納得といえば納得ですが…。

また、先ほど述べた通り光太郎の行動原理がイマイチよくわからなかったので、そこから感じるヒーロー性が不足している印象を受けました。

変身についても、怒りをトリガーとして仮面ライダーに変身するのは「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」でお馴染みのBLACKらしい展開ではありましたが、そこにもう少し理屈が欲しいところでした。せっかくキングストーンが手元にあるんだから、50年前に失ったキングストーンを再び取り込むことで怪人から一段上の存在へ昇格する的な展開があっても良かったかなと。

とはいえ、ヒーロー要素の不足はありましたが、話の展開や創世王によって怪人が作られると言った設定など、仮面ライダーや仮面ライダーBLACKにおけるキャラクター性(親殺し・ライバルとの戦い等)は持ち合わせていたので、これはこれでいいのかなとも思います。

また、仮面ライダーといえばやっぱりバイク。ライダーでよくある、敵を追いかけるなどの理由で行われるバイクチェイスを含め、変身後のバイクシーンがほとんどないのは残念でしたが、変身前ではバリバリに乗り回していたのでそこは良かったですね。

ファン的にはバトルホッパーとは意思疎通をしてほしかったですが…そこは仕方ない。

イマイチ真新しさを感じられなかった

これまで全く別の畑で監督を行っていた白石和彌が仮面ライダーのメガホンを取るということで、これまでとは全く別の作品が生まれるのではないかと期待していた本作。たしかにこれまでの作品とは異なるものが提供されたとは思うのですが、どうにも一部、過去作で見たような既視感がちらついてしまいました。

例えば「怪人と人間の価値観の違い」、「人間と同じ心を持った怪人」、「人間と怪人の共存」については『555』で描かれていました。

過去と現在が交錯するという話の運びは、父世代と子世代で時代が交錯する『キバ』で行われていました。

グロテスクな戦闘描写は、『真』ではもちろん、同じくプライム作品である仮面ライダーアマゾンズでも行われています。というか、グロ描写についてはアマゾンズ(二期)の方がキツいな、と感じました。

また、吐血描写や流血描写は漫画『仮面ライダーspirits』や、初代&V3のリブート作である『the first』『the next』で行われています。

(だいたい井上敏樹さんがメイン脚本やってたライダーの名前が出てますね)

よくないファン心理だとは思うのですが、どうしても過去作と比較してしまい、真新しさを感じにくかった点は少々残念に感じました。

戦闘シーンがなんか地味

個人的に一番物足りなさを感じたのは、戦闘シーンの地味さです。

やはり仮面ライダーと怪人は人間を超越した存在であってほしかったので、ド派手な戦闘シーンが欲しかったのが正直なところです。もっとバンバン町を壊し、壁を貫き、破壊と爆発が欲しかったのです。

リアル寄りの作風なので、下級怪人が拳銃で殺されてしまうのは構いません。しかしビルゲニアレベルの怪人なら、ただの銃弾で深手を負ってほしくありませんでした。せっかく世紀王は人間の管理下にあったわけですから、対怪人装備とかもあっても良かったなと思います。

そんな感じで上級?怪人のビルゲニアですらそのレベルなので、BLACK SUNとシャドームーンの戦闘でも壁の一つも破壊されることはありません。そのため折角の最終決戦も部屋の中にこじんまりと収まってしまった印象を受けました。

VSシャドームーンは必殺技の打ち合いがめちゃくちゃかっこよかっただけに、イマイチ技の威力を感じにくく、物足りなさを覚えます。MCUなどの海外ヒーローの戦闘シーンの迫力が凄いだけに、どうしても比べてしまいます。
本作でももっと特撮らしく、人外VS人外の戦いを描いて欲しかったですね。

まとめ

という感じで簡単に良かった点とイマイチだった点をまとめてみました。こうしてみると作品に対して不満に思っていることが多いように感じられますが、僕の心象としてはなかなかいい作品だったなと感じます。
ただ普段と違う監督がメガホンを取ったということと、一般受けする仮面ライダー作品にするという意気込みがあったため、期待が過剰だったのかもしれません。どうしても良かった点よりも、見たいと期待していた部分が不足していたり、過去作品からなる既視感が気にかかってしまいました。

二周目になればまた印象は変わってくるかもしれないので、早速二周目も見ていこうと思います!

おまけ その他、気になったところ

  • 第一話の英語のスピーチ、字幕があると有難かった(アマプラの設定で付けられますが)
  • 光太郎は創世王に負けたあと、50年間も何をしていたんだろう? 足の怪我の療養?
    現在では人・怪人問わず殺害し、懸賞金的なものを貰っていた?
    (そのわりに人食に抵抗があるのか、ヘブンは最後以外は口にしなかった)
  • コウモリが言うには、怪人の腹部にはキングストーンが埋まっているとのこと。しかし50年前、光太郎と信彦はキングストーンを体内から取り出しているにも関わらず、現代で怪人体および仮面ライダーへと変身できている。……どういうこと?
  • 創世王、および光太郎&信彦は日食の日に改造手術を受けることで創世王になる資格を得た。しかし和泉葵は日食とか関係なさそうなときに改造されたにも関わらず、なぜか「創世王になる資格」を与えられていたっぽい。上級怪人であろう三神官のダロムとビシュムすら創世王にはなれなかったのに。なぜ和泉は創世王の資格があった?

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